世の中の競争の場面では様々なモノサシが用いられます。
例えば社会的知性やルックス、心身の健康状態やIQなどがあり、それらで頭一つ抜きん出たとき”成功者”と称されることがあります。
しかしアメリカのある研究者によると、成功の秘訣はIQやルックスが要因にあるというわけではなく、「やり抜く力」にあると言うのです。
ではやり抜く力がなぜ成功を決める「究極の能力」とまで呼ばれるようになったのでしょうか?アメリカで行われた研究内容を元に紹介していきたいと思います。
あなたはアンジェラ・リー・ダックワースという方をご存知ですか?
彼女はペンシルベニア大学心理学部教授で、近年アメリカで重要視されているGRIT(=『やり抜く力』)の研究の第一人者です。
彼女はスポーツ界やビジネス界のみならず、ホワイトハウスや世界銀行、アメリカの軍隊学校など、幅広い分野のリーダー達からやり抜く力を伸ばすためのアドバイスを求められるほどの人物です。
ハーバード大学を優秀な成績で卒業後、マッキンゼーの経営コンサルタントの職を経て、公立中学校の数学教師をやっていたという経歴があります。
そんな彼女が教師をしていたときに気づいたことがありました。それはIQだけが優等生と劣等生の違いを生んでいるわけではないということです。
成績は良くてもIQはそこまで高くない生徒や、成績はあまり良くなくてもIQは高いという生徒がいたそうです。不思議に思いませんか?
ダックワースによると学校で学ぶことは確かに難しいですが、十分な時間をかけて一生懸命勉強すれば習得することは不可能ではないということです。
そしてそこから至った結論は、学校教育で必要なことは動機付けであり、心理学の観点から生徒や学習について理解すべきだということでした。
IQは教育において頻繁に用いられるモノサシの一つです。しかし学校や人生で”うまくやれるか”が、IQ以外に掛かっているとしたらどうでしょう?
成功する人がIQが高い人物だけということでなければ、いったいどのような人物が成功しやすいのでしょうか?
このことを調査するために、ダックワースはチームを組んで、様々な挑戦的な環境に置かれた子供や大人の研究をしました。
- 軍隊の訓練においてどんな人物が残って誰が中退してしまうのか
- アメリカの漢字検定のようなテスト競争でどの子供が生き残るのか
- 不良がたくさんいるような地域で働く新米教師を調べてどの教師が学年が終わるまで続けられるか
などといったケースを元に考察を行うことです。
こうした様々な状況において、成功を左右した一つの大きな特徴が浮かび上がってきました。それが冒頭でもお伝えした究極の能力『やり抜く力』です。
ビジネスや体力、知力を競い合う中で成功するために必要なことは社会的知性やルックス、心身の健康状態、ましてやIQでもありません。
『やり抜く力』とは長期目標に向けた情熱や忍耐力であり、自分の将来のために昼夜を問わず継続することができる力なのです。
これは「その日だけ頑張る!」「その週だけ頑張る!」といった短距離走ではなく、年単位で継続するマラソンのようなものでしょう。やり抜く力を持っている人間は「精神的スタミナ」がある人間ともいえるかもしれません。
あなたは「1万時間の法則」という言葉を聞いたことがありますか?ある分野において能力を開花させるためには、1万時間を費やさねばならないという法則です。
さらに今回紹介した成功を決める「究極の能力」と称される『やり抜く力』。
世の成功者はある分野で1万時間を費やすほどのやり抜く力を持っている人間ということが言えるのではないでしょうか。
(参考文献)アンジェラ・リー・ダックワース『GRIT-やり抜く力』(ダイヤモンド社出版)