無駄な買い物はなぜ起こるのか?~行動実験から学ぶ④

節約の第1歩は「おとり」を実感することから

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

なんとなくふらっと入った靴屋さん。デザインが好みの靴が1万円で売られていて、やっぱり高いなぁと感じているあなた。

そんなところに、1つ前のモデルの靴が7000円で売られているではありませんか!これは買わねばと意気揚々とレジで会計。そして帰る道で「あれ、今日買い物するつもりじゃなかったのに?」と気づく。

これに似た経験をしたことはありませんか?よく考えると、買わなくてもいいはずのものを知らないうちに買っている自分がいる。それは「おとり効果」にハマっている証拠なのです。

無駄な買い物をしてしまいがち……というあなたがハマっている罠である「おとり効果」について、おもしろい実験を紹介しながら説明していきたいと思います。

本来買わないはずが買ってしまう

無駄な買い物をしているときに高い確率で存在しているもの、それは「おとり」です。そのおとりに関する1つの実験をまずは紹介します

この実験ではある雑誌の定期購読をするかどうか、というアンケートを大学生100人に実施しました。

定期購読の選択肢は「電子版が読めて、価格は59ドル」と「印刷版と電子版両方が読めて、価格は125ドル」の2つです。そのアンケートを実施した結果、

59ドルのWeb版を選んだ人…68人

125ドルのWebと印刷版のセットを選んだ人…32人

となりました。つまり値段が安いWeb版でいいという学生が多かったのです。

ここまでは普通の結果ですが、ここからが重要なポイントとなります。この実験では「印刷版だけが読めて125ドル」という選択肢を加えて3択の状態で再度アンケートを実施したのです。

つまり印刷版しか読めなくても、印刷版に電子版をつけても同じ値段、という要素を加えたのです。その状態でアンケートを実施した結果、

59ドルのWeb版を選んだ人…16人

125ドルの印刷版を選んだ人…0人

125ドルのWebと印刷版のセットを選んだ人…84人

と変わったのです。つまり最初と同じ値段で聞いたはずなのに、「印刷版のみ」というダミーの選択肢が入っただけで値段が高いほうを選んだ人が増えたのです。

なぜこのような逆転現象が起こったのでしょうか?

「買う買わない」から「どっちがいいか」へ

私たちは何かを評価するとき、複数のものの間で比較をしています。これは買い物も同様で、「他よりとお得」に見えるものを選んでしまう習性があります。

すると本来は「買うか買わないか」という議論をするはずが、「AとBのどっちを買うか」という議論にすり替わってしまい「買わない」という選択肢が抜けてしまうのです。

このようなテクニックで客に商品を買ってもらおうという手法はユニクロなどのチェーンの洋服店でも見られます。

洋服店に行くと黒や紺といった無難な色の横に、「これは誰が着るんだろう?」というほど派手なピンクや緑といったカラーの服も同じように置いてあるのをみたことはありませんか?

これもおとり効果と同様で、「この派手な色は自分に合わないし、無難な黒や紺を買おう」という様に本来買うつもりがないお客さんにも買ってもらえる効果があるのです。

しかし私たちのお金は有限です。できれば自分が本当に必要なものだけにお金を使いたいものですよね。

おとりにハマらないための2つのチェック

ではおとりに引っかからずに生活するにはどうすれば良いのでしょうか?主にチェックするべきポイントは2つあります。

1つ目は「買う前におとりが存在しているかを確かめる」ことです。

先ほどの例でも見たように、複数のものを比較するとどうしても安い方が魅力に見えてしまいます。つまりあからさまに高い商品が存在して、それによって自分が買っているのではないかということを疑ってみるのです。

そして2つ目は「比較対象を見ないで単体であれば買うかを検討する」ことです。

同じような服や靴は持っていないか、一食に支払う食事として高くないか、本当に定期購読する必要はあるかなど、そのもの自体の必要性を考えれば買わなくても良い買い物はあるはずです。

商品に買わされるのではなく、あなたが本当に欲しいものにお金を使える生活をするためには、「脱・おとり」の買い物を身に着けることが重要なのです。

(参考文献)池田貴将『図解 モチベーション大百科』(サンクチュアリ出版)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク

無駄な買い物はなぜ起こるのか?~行動実験から学ぶ④
いいね!を押してGOA onlineの最新記事を受け取る