「お金が落ちてる!ラッキー!」
と思って拾おうとしたけど、よく見たらゲームセンターのコインだった……。こんな時のがっかり感ほどむなしいものはありません。
しかし、素材としては100円玉と同じような金属を使ってるのに、何故ゲームコインはお金として使えないのでしょうか?そんなのは当たり前だ、と思うかもしれませんが、今回のお話はそれを当たり前と感じるようになったエピソードです。
【前回の記事】では人類が物々交換からはじまり、お金の始まりである貝などを利用した物品貨幣が広がったが、品質や流通量から限界が来たところまでお話ししました。そんな貝などに代わって登場した、あなたも毎日使ってる「硬貨」について今回はお話しします。
コインのはじまり
最初の硬貨がいつ誕生したか正確なものではありません。古代の文献によると、現在のトルコに紀元前7世紀から存在したリディア王国が最初にコインを作ったとされています。
そして、硬貨が物々交換や貝などを貨幣することよりも便利なことがわかると、周囲の国は真似をしていきます。そうして、地中海を中心にコインが貨幣として流通していきます。
これらの地域のコインの多くは銀や金といった金属を素材として作られていました。つまり、コインに含まれる銀や金の価値と、食料や工芸品といったモノを交換していたといえます。
しかし、ここである問題が発生しました。受け取った銀貨や金貨が本物の銀や金なのか、そしてその通貨が本当にその重さ分あるのかがわからないことです。例えば4gの銀貨だったら、内側に銅が混ぜられていないか、3.5gに減らして作られていないかが判別できないのです。
コインに証明が伴わないというこれらの問題を克服したのがアテナイの銀貨なのです。
中身が証明された銀貨
ギリシャの首都であるアテネの昔の名前を「アテナイ」といいますが、昔はアテナイに一つの都市くらいの大きさの国がありました。当時のギリシャはたくさんの国が乱立していた時代でした。
それら国々がそれぞれコインを発行していましたが、国際的なコインとして使われたのが、アテナイが発行した銀貨なのです。たくさんあるコインからなぜアテナイの銀貨が選ばれたのか?
それは、アテナイの国が銀貨に刻印を押すことで、「このコインはちゃんと銀が4g含まれているコインです」というお墨付きを与えていたからです。そのため、人々は安心してそのコインを利用でき、そのためアテナイの国の外でも利用されました。
しかし、アテナイのコインが流通すればするほど、原材料の銀が必要となってきますが、アテナイが持っている銀鉱山から発掘できる銀の量も有限です。そのため、銀や金の価値をそのまま硬貨にするというのは、すぐに限界が来ることは察していただけると思います。
しかし、次に地中海の覇者となったローマ帝国は意外な方法でこの問題を解決したのです。
ローマがやった、イケナイ方法
ローマ帝国はもともとイタリアの現在のローマに生まれた小さな国でした。しかし、西暦120年くらいに今のヨーロッパのほぼ全部とトルコ、北アフリカをも収める巨大な国へと発展していき、これがローマ帝国です。
これほど巨大な国ですから、必要な硬貨の量も莫大になります。しかし、アテナイと同様に硬貨を作っていては銀が足りません。そこでローマ帝国はある禁じ手を取りました。
それは「コインの中の銀の純度を下げて、刻印だけ押す」という方法です。ローマ帝国で発行されたコインは最初こそ純銀でしたが、時代がたつにつれて不純なものとなり、最終的には2.5%しか銀が入っていない状態となったのです。
つまり、この時に初めてお金が現在と同じ状況になりました。つまり「実際にお金の素材が持つ価値」より「そのお金が示す価値」が大きくなったのです。
今の1万円札を作るのに20円しかかかっていないのに、全員が1万円分の価値があると認めている、この状況はローマ帝国に生まれたのです。
信用があるお金が出回る
お金を実際の価値以上にするとは、どういうことか?これは「発行元の信用」で成り立っているということになります。
例えば、私が紙に「10000円」と書いた紙をあなたに渡しても、あなたはそれを1万円分の価値があるとは認めないと思います。「1万円札」が1万円の価値があるとするのは日本銀行が発行した物だから、つまり国が発行しているという信用のもとにお金が作られているということになるのです。
まとめると、国がお金を保証することがアテナイの時代に行われ、そしてローマ帝国の時代にその保証で信用を生み出し、実際以上の価値をお金に持たせたということになります。
しかし、人類がどんどん発展していくと、国や大陸を超えて貿易が盛んになります。すると、実際の価値よりも水増ししても、金属でお金を作ること自体も限界となってきました。
それを解決したのが「お札」になるのです。【次回の記事】はお札がこの世に登場したエピソードからお話しします。