お金の歴史③~紙がお金になり、金融が支配する世界~

この世のお札が生まれたエピソード

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日本という国が借金してるなら、お札を印刷すればいいのに。経済について無知だった子どもの時にこんなことを考えた人は少なくないはずです。しかし、この子どもながらの考え、実はあながち間違っていないのです。

【前回の記事】では「コイン」がこの世の中に広がっていたお話をしました。そして、お金というのが発行元の信用だけで成り立つ状況がローマ帝国にお話ししました。

今回は前回の続きとして、硬貨から発展し、ついに紙のお金が流通し始めたというストーリーについてお話しします。毎日使うお札に関する豆知識をしっておきませんか?

お金の面白い歴史豆知識の第1回目の記事は【こちら】になります。まだお読みでない方はこちらからご覧ください。

お金の意外と知らないストーリー③

広がる世界と変わるお金

中世までのお金というのは原則として一つの町の中での流通であり、拡がったとしてもその国や地域の中という限られた範囲でしか動いていませんでした。

しかし、15世紀から始まったポルトガルやスペインによる「大航海時代」が状況を一変させます。コロンブスがアメリカ大陸を発見したことによって始まったこの大航海時代は、ヨーロッパの人の貿易範囲を急激に拡大させました。

大陸を超えた物の動きが始まり、既存の金属を使った硬貨では量が圧倒的に不足する状況となりました。しかし、どんな金属を使っても、いずれは底が尽きるもの。そこで、人々は紙幣といういくらでも作ることのできるものをお金として扱い始めたのです。

しかし、ここである疑問が生じます。お金が金属の硬貨から紙幣に代わり始めたとき、人々は「こんな紙切れが本当にお金になるのか」と疑問に思わなかったのでしょうか?

紙幣は預けた証明書から発展した

紙幣は思ったより簡単に人々の間に流通していきました。それは当初の紙幣は「持っていけば価値のあるものに交換してくれる」ものだったからです。

例えば、今の日本のお金が硬貨だけ、つまり500円玉以下のコインしか使えない状況を考えてみてください。

財布に5万円程度は常に持っておこうとすると、100枚程度は硬貨を持っていなければいけないことになります。500円玉は1枚あたり7gですから、財布は大体1kgになります。重たいですし、支払の時も非効率です。

そこで、あなたは政府などの公的機関に500円玉20枚を預けて、代わりに銀行から「あなたから20枚500円玉を預かっています。」という証書をもらいます。しかし、よく考えてみると、この証書には1万円分の価値あることにお気づきでしょうか

例えばレストランで食事の代金として1万円の支払いとなった場合、500円玉20枚の代わりにこの証書を渡せば、レストラン側は銀行で1万円に引き換えできます。こうして紙のお金というのが普及したのです。

そして、現在のような「銀行」が発行した紙幣が広がったのは1600年代のスウェーデンであると言われています。

当時のスウェーデンは金銀が不足していたため銅の硬貨を使っていました。しかし、大きさが30cm×60cm、重さが9kgという銅貨まで登場しており、こんなに重たい物を持って商売するのは不可能でした。

このスウェーデンの紙幣を周辺の国が真似をしていくことで、中世のヨーロッパで紙幣が広がっていきました。現在では当たり前となっている「通し番号」や「透かし」といった技術もこの時期に発明されていたと言われています。

紙幣の登場によって、生まれたもの。それが「銀行」の存在です。

錬金術でお金を作ってきた銀行

紙幣が登場する前までにもお金の貸し借りという行為はありました。しかし、銀行登場以前の金貸しは持っている資産を貸して利子をつけて返してもらうだけの存在でした。

例えば100万円持っているならば、100万円しか貸し出すことができないということです。金属のお金を手元で増やすことは今も昔も違法ですので当然ともいえます。

しかし、お金を発行する権利を持った銀行は、それまでとは違う金貸しへと変化していきます。まず、100万円を貸すと、「100万円分借りてます」という借用書を受け取ります。しかし、他にもお金を貸してほしいという人はたくさんいるのです。

すると、銀行はその借用書を担保にお金を発行して、そのお金を貸し出すのです。つまり、紙のお金を錬金術で生み出しているということになります。

「預けられた金(きん)の価値の分しか紙幣は発行されないはずでは?」とお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、こうした銀行の紙幣を用いた錬金術は数字が物語っており、さらには現在まで続いています。

全世界にあるお金を全て足し合わせた数値を「総通貨供給量」と言いますが、1961年には約82億円であるのに対し、2008年には約5889億円まで増えています。

つまり、この40年余りで世界に存在するお金は70倍以上まで膨れ上がっています。この世の中にある金や銀がいきなり70倍になったとは考えられません。世界中の銀行がお金を発行しまくっている証拠なのです。

座っているだけで儲かる産業

こうしてお金の貸し借りだけで富を生み出す「金融」という産業が生まれ、銀行はその中心に君臨することとなりました。銀行の訳語「bank」は元々「椅子」を表すものであり、座っているだけでお金が入ってくる状況から生まれたという語源が物語っています。

そして、この銀行のあり方は現在でも同じです。あなたが銀行に預けていても、利子はほとんどもらえません。その一方でATMから引き下ろすたびに手数料として減らされていきます。

投資信託や外貨預金などあなたの収益は保証されないのに取引手数料はごっそり持っていかれます。

そして何より、銀行が倒産すれば「一応」預金保証こそはされていますが、その預金がいつまでに返されるかは決まっていません。

あなたのお金は毎日頑張った労働の対価として受け取っているもののはずです。その大切なお金を銀行に放置する、つまり「椅子に座っているだけで儲ける人」に吸い取られるままでよいのでしょうか?

銀行に全て託すのではなく、あくまで資産を守る手段の一つとして銀行を捉える必要があることはお金の歴史を見ても明らかでしょう。お金についてきちんと学んだ人が得できるように社会はできているのです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク

お金の歴史③~紙がお金になり、金融が支配する世界~
いいね!を押してGOA onlineの最新記事を受け取る