仕事で失敗したとき、忙しいとき、何か理不尽なことが起きたとき、上司に怒られたときなどストレスを感じる場面は様々でしょう。
人はストレスを受けると、呼吸が荒くなったり、鼓動が速くなったり、汗をかいたりなどして不安感が現れます。
しかし、これらの呼吸の荒さや汗をかくなどの身体反応が体に活力を与え、むしろいい状況になっているという事実をご存知でしょうか?
【前回の記事】ではストレスが人に与える影響として、『ストレス自体』が害を与えるのではなく、『ストレスに害があると信じること』が心身に悪影響を与えることを、アメリカの研究をもとにお伝えしました。
今回は前回のストレスの捉え方を踏まえて、それがどう心身に影響を与えるのかについて科学的根拠も交えつつお伝えしようかと思います。
呼吸が荒くなるのは、脳へ酸素を送るため
ストレスの影響について考えるために、まず初めにハーバード大学で行われた実験をご紹介します。
テストの参加者に簡単な算数の問題を解いてもらうのですが、そこで解き続けている最中に試験官が「もっと早くお願いします」や「遅いですよ」などと言って参加者を焦らせます。
しまいには「一人間違えた人がいるので最初からお願いします。」と言ったりしてストレスを加えつつ問題を解かせるテストです。
こうすると、参加者は冒頭で紹介したように呼吸が荒くなったり、鼓動が速くなったりするなどのストレス反応が現れます。
ただ、このテストを始める前にあることをすると、結果が全く変わったものとなります。
それは、「呼吸が荒くなるのは脳を活発に働かせるために、酸素をより多く取り入れているのである」というように、ストレス反応を有効なものと考え直させるのです。
すると、参加者たちは試験官に焦らされたりしても、ストレスや不安が少なく、自信を持てるようになったと言います。
このように、ストレス反応は能力を十分発揮できるようにするものと知っておくことで、ストレスを受け続けたとしてもパフォーマンスを落とすことなく、むしろ自信を持ってテストに臨むことができたのです。
心だけでなく、身体にも良い影響を与える
さらに驚くことに上記のような考え方を持つことで精神的な面だけでなく、心臓など身体機能にも影響を及ぼすことが分かりました。
通常の場合では、ストレス反応が現れると、心拍数が増えて血管が細くなってしまいます。
血管が細くなった状態にもかかわらず、心拍数が上がったことで血流は増すので、結果的に身体に負担がかかっている状態になってしまいます。
では、ストレス反応を有効なものととらえられるようになった参加者はどうだったのでしょうか?
こちらも確かに心拍数は上がったのですが、血管が細くなることがなかったため、身体への負担が大きくならずに済んだのです。
ストレスが自分の体や心にどういった影響を与えるかを知っているだけでも、勇気を持って行動することができるということでしょう。
ストレス社会を生き抜くために
【前回の記事】でストレスは様々な病気の元凶になり得るという話をしました。
しかし、その捉え方を変えるだけで厄介だと感じていたものが、逆に勇気をもらたしてくれる強い味方になってくれます。
現代はプレッシャーの多いストレス社会と言われています。
このストレスの多い人生で、心や身体を健康に保つ方法、つまりストレスに対する考え方を正しく持っているかどうかが、30年後や50年後の運命を左右しているのかもしれません。