大数の法則~ネコでもわかるビジネスキーワード百科

私とAさんがサイコロ勝負をするとしましょう。勝った方が負けた方に高級焼肉をおごるというルールです。しかし勝負の前にとあるウワサをあなたは思い出します。

「Aさんってよくサイコロで賭けしているけど、自分のサイコロだけ6が出やすいようにイカサマしているらしいよ」

そこであなたは勝負の前に、Aさんのサイコロがイカサマされているものかどうか確かめようとします。さて何回振ってみればこの事実はわかるのでしょうか?

これを理解するのに必要なキーワードが「大数の法則」です。

これからの時代のビジネスでは文系出身でも数字を用いたデータ分析への理解が重要となってきますが、大数の法則はその際に必要な知識となります。これを機会にきちんと読み込んでおきましょう。

大数の法則とは?

「大数の法則」とは「十分なサンプル数の集団を調べることで得られた傾向は、そのサンプルが属する母集団の傾向と同じになる」という法則です。

単語を並べただけでは難しいですから、冒頭の例を用いて考えてみましょう。

あなたがAさんのイカサマサイコロを振ってみて、1回目で6が出た。しかしこれだけでイカサマだ、と言い切ることには違和感を感じませんか?普通のサイコロでも1回目で6が出ることは十分可能性としてあると思います。

しかし50回振ってみたら、そのうち「6」が30回出た。ここで「おかしい?」と感じるのではないでしょうか?

本来サイコロは約6分の1ずつの確率でそれぞれの出目が出るはずです。50回振った場合、平均では約8~9回程度しか「6」は出ないこととなります。

そしてあなたが根気強く1000回振ってみたとしましょう。すると「6」が500回出てしまった。これはあからさまに「イカサマだ!」と言い切ることができるでしょう。

冒頭の定義を解説すると、「1回だけ振る」のではなく「1000回振る」ということが「十分なサンプル」を調べるということです。

そして「1回」より「50回」、「50回」より「1000回」振る方がそのサイコロが本来出す確率に近づく、これが「母集団の傾向に近づく」ということです。

そして社会でこの大数の法則が使われている典型例、それが「保険」なのです。

あなたの保険料は大数の法則で決められている

人間はいつ死ぬかわかりません。この事実によって多くの人が「保険」に入っています。

いつ死ぬか、いつケガするかわからないにも関わらず、どうして保険会社は儲けられるのか、ここで大数の法則が活用されているのです。

あなたが30歳に入ろうと考えた場合、保険会社はあなた自身がいつ死ぬかというのを予測して保険料を決定していません。100歳まで生きるかもしれないし、明日死ぬかもしれない、予測が不可能だからです。

しかし30歳の人が10万人いたらどうでしょうか?平均寿命が80歳だとしたら、「30歳の人はあと50年で大体亡くなる」ということが大数の法則から当てはめることができます。

その場合に保険会社は、一般的な平均寿命に少し上乗せして「30歳の人が85歳まで生きたら元を取れる」保険を作ることで儲けることが出来るのです。

また大数の法則が用いることができる例をもう一つ上げるとすれば、「広告」の分野でしょう。

この広告出したら、利益はどれくらい?

あなたの会社で新商品を発売するにあたって、あるエリアに新聞に折り込みのチラシを配布するとしましょう。

このままではチラシを入れた効果によっていくら利益が上がるのか、それに対する費用は適切なのかを考えることはできません。

しかし大数の法則を利用すると、チラシを見た人の何%が実際の購入につながるか、それを少ないサンプルで考えることができます。

前もって300人のサンプルを集めて、「このチラシを見て新商品を買うか?」というアンケートを実施してみると、約5%の人間が「買う」という意思を持ったとします。

大数の法則に従えば、新聞に折り込んでそのチラシを見た人が10万人だとすれば、その5%である5000人が買うと予想できます。

つまり大数の法則は「小さなサンプルで大きな数字を推定することに役立つもの」と言えます。

実践では例外に注意!

大数の法則について、理解することができましたでしょうか?

実際に大数の法則を利用する際に、サンプル数はいくつ必要なのかというのは状況によって変わってきます。

また選ぶ確率がほぼ小さい、もしくは全員がほぼ選ぶといった一部のケースでは大数の法則が活用できない場面というのもあります。

実際のビジネスで活用する際にはこれらの点に注意しながら利用していきましょう。