あなたは2008年に起こった「リーマンショック」について、正しく説明できますか?
不景気で「サラリーマンにショック」が起こった、なんて冗談は今日で終わりにしましょう。
今回の記事では、リーマンショックやそれにまつわる用語の解説と、再び起こるであろう経済危機にあなたが生き残っていくにはどうすれば良いのか、考えていきたいと思います。
これをきっかけに、ビジネスでも使える世界経済を学び始めてみませんか?
1.リーマンショックを一言で言うと
リーマンショックの「リーマン」とは超大手の証券会社であった「リーマン・ブラザーズ」のことです。
このリーマン・ブラザーズが2008年9月15日に倒産に陥り、これが一番の要因となって全世界に経済危機が広がったため、リーマンショックという名前で呼ばれているのです。
つまり、リーマンショックを最も簡単に説明するならば、「2008年に起こった、リーマン・ブラザーズという会社を発端とした世界的経済危機のこと」となるわけです。
さて、出来事の概要を簡単にさらった上で、何故リーマン・ブラザーズが倒産したのかを考えてみましょう。
リスクをとった成長
リーマン・ブラザーズはアメリカで当時第4位の巨大で名門の証券会社でした。十分大きい証券会社なのですが、金融の世界にはさらに上がいました。
「ゴールドマン・サックス」や「モルガン・スタンレー」といった会社の名前は聞いたことがあるのではないでしょうか?
日本の銀行でたとえると、「三菱UFJ・みずほ・三井住友」のメガバンクに続く、りそな銀行のような立ち位置にリーマン・ブラザーズがいたと考えるとわかりやすいと思います。
リーマン・ブラザーズの規模ではまだまだ買収される恐れがあったため、より大きな証券会社へと変わる必要がありました。業績を伸ばすため、ハイリスクハイリターンな商品に手を出していきました。
それらハイリスクな商品の一つが今回の事件のカギとなった「サブプライムローン」関連の商品なのです。
「サブプライムローン」は一言で表せば、低所得者でも家が買えるように組まれたローンのことです。住宅の値段は上がっていき、リーマン・ブラザーズはさらに実力をつけていきました。2007年には総資産が6900億ドル、日本円で約70兆円の大企業になったのです。
しかし、やはりサブプライムローンは投資し続けるのにはあまりにもリスクが高かったため、リーマン・ブラザーズは崩壊の道へと進むのです。
全てが崩壊した2008年
サブプライムローンはもともと無理な設定で組まれてしまったローンなので、徐々に返せない人が続出しました。このようなローンの焦げ付きが続き、ついに2007年に住宅市場の価格が一気に下落し、住宅バブルが崩壊しました。
その結果、サブプライムローンに大規模な投資をしていたリーマン・ブラザーズは日本円で64兆円という莫大な負債を負うこととなったのです。
64兆円にピンとこない方もいらっしゃると思いますが、当時の日本の国家予算が約80兆円ですから、日本という国が約10か月分で使う金額となります。
言い方を変えれば、地球に住む全人類から1万円ずつ回収しないと返せないとも言えます。
そして、この大量の負債は大国であるアメリカでも救済することはできず、2008年に9月にリーマン・ブラザーズは経営破たんとなりました。
そして、この一大証券会社の経営破たんはアメリカ経済の崩壊を引き起こし、アメリカでは800万人が失業しました。そして、経済危機が全世界に広がっていったのです。
ではなぜこの証券会社は破たんしたのか、それは「サブプライムローン」というお金の貸し方が問題だったのです。
2.証券会社の倒産は「無謀な借金」から始まった
「10億円の豪邸に住みたくないですか?」
「え、お金がない?大丈夫!ローンで今すぐ住めますよ!」
「そんなローンでは返せない?大丈夫!最初は月々5万円だけ返していけばいいですよ!」
こんなローンを勧められたらどうでしょうか?絶対返せるわけがないとお分かりだと思います。
しかし、これに似た状況が2000年代のアメリカでは平気で行われていたのです。そして、このシステムの崩壊があのリーマンショックを引き起こした原因なのです。
借金は信用の元に成り立つ
サブプライムローンについて考える前に、まずローンの基本について確認しましょう。
日本でも銀行からお金を借りるときは基本的に「信用」というものが必要になります。例えば、勤めている会社が上場しているか、勤続年数がどのくらいか、その他今までの納税額や借金・クレジットの支払い状況などの情報が信用を決めます。
借りた人が借りたお金を最後まできちんと返せるかどうかというのを「信用度」で測っています。そして、その審査で貸し出しの是非や貸してくれる上限金額というのが決まるのです。
アメリカも同様で、信用がきちんと証明できる条件をクリアすれば、金利が低く設定される「プライムローン」というものを利用できます。
一方、アメリカの住宅市場に目を向けてみると、住宅の価格というのが年々上昇していました。そして、家の値段が上がりすぎて、低所得者が買うことができない状況になっていたのです。
通常ですと、低所得者の人は返済する能力がないと考えられ、普通のローンで買うことはできません。
しかし、「このまま住宅価格が上昇していくのであれば、無理やりローンを組んだとしても住宅の価値の上昇分で利益が出る」とお金を貸して儲けたい銀行は考えたのでしょう。
そうして、所得が低くなっている、あるいはアメリカに居住歴がほとんどない移民など、信用が十分でない人でも組めるローンというものを作ったのです。これが「サブプライムローン」です。
しかし、低所得者が高い家を借りても、普通のローンでは返済できません。そこで、あるカラクリを潜ませたのです。
最初は少ない返済で大丈夫という罠
ここでは例として、毎月20万円を返す住宅ローンを考えましょう。しかし、月収20万円の人にその金額を毎月返済してもらうことは不可能です。
そこで貸し出す銀行はサブプライムローンに特殊なルールをつけます。そのルールが「ローンを組んだ初めの期間は返す金額を少なくてよい」というものです。
本来であれば毎月20万円返さなければいけないところを、はじめは毎月10万円だけ返済すればよい、ということになります。そして、ここで足りない10万円分は貸している金額にさらに足されます。
しかし、少ない金額だけ返済すればいい一定期間を過ぎると、返済額は一気に上がり、もともと所得が低い人たちが支払うことは不可能になります。その場合は新たにローンの借り換えを行う必要があるわけですが、これは住宅の価値が上がっていないとできません。
つまり、サブプライムローンは最初から崩壊することがわかっていたローンということになります。
そうしてアメリカの返済システムは崩壊していったのです。
家を手放せば返済しなくていい!
日本でローンを組むと、買った家を手放した場合でも原則としてローンの返済義務は残ります。しかし、アメリカのローンの場合、家を手放してしまえばローンの返済義務も同時になくなるのです。
すると、ローンが払えなくなった人の家を銀行が抵当で差し押さえます。そして銀行は貸したローンの残り分を回収するために家を売ろうとします。
さて、この現象がアメリカのあちこちで起きるとどうでしょうか?市場に家が大量に余っている状態、つまり、住宅の価格がどんどん下がっていくのは明らかです。
ここでサブプライムローンの前提を考えてみると、住宅の価値が上がると見込んで組んでいるローンなので、返済できない人がどんどん増えていきます。
すると、銀行は支払いが滞っている人から家を取り上げて、それを叩き売る。そして、売り出しの住宅の量がまた増えるので価格が下がる。ついに上昇し続けた住宅市場に限界が来るのです。
サブプライムローンのシステムは崩壊
こうして返せるはずもない住宅ローンを組んだ人は家を失い、この結果アメリカでは家を失った人が大量に発生してしまったというのが、サブプライムローン問題の一つの側面です。
しかし、あくまでこの住宅市場の崩壊というのはサブプライムローンによって生じた問題であり、本題である「リーマンショック」はこのサブプライムローンを利用して利益を生もうとした投資銀行が破綻したことです。
では投資銀行は何をしたのか、それはお金を稼ぎたい一心でこのローンを使って一儲けをたくらんだのです。
3.ローンを商品にして転売した銀行
住宅ローン会社はローンの利息で儲けたいので、色んな人にお金を貸し出していきます。
しかし、このまま貸し出しだけを続けていくと、ローン会社の金庫はすっからかんになってしまい、新しく貸し出すことができません。
それを解決したのが「住宅ローンの証券化」というものです。証券化とは「貸している借金に利子をつけて返してもらう権利」を商品にしたものです。
わかりにくいと思いますので、あなたがお金を貸す例に例えて考えてみましょう。
借金を返してもらう権利をそのまま売る
あなたは会社の同僚のAさんに頼まれて10万円貸しているとしましょう。Aさんは返す時にお礼として1万円分の焼肉を奢ってくれるという約束をしています。
しかし、ここであなたは別の友人であるBさんにも「返す時に1万円プラスするから、今すぐ10万円を貸してほしい」と言われました。
しかし、あなたは既にAさんへお金を貸しているので、お金に余裕がありません。Aさんに今すぐ返してくれということはできませんし、Bさんを断ると1万円もらえるチャンスを失ってしまう。
ここで、「借金を証券化する」ということをします。あなたは知り合いのCさんに「Aから10万円返してもらって、かつ1万円分の焼肉を奢ってもらえる権利を10万5千円で買わないか?」とお願いします。
Cさんからすると、Aさんにお金を返してもらえば、1万円の焼肉を実質5000円で食べられるので、5000円分得になると考えて、あなたから買い取ってくれます。
そして、あなたも5000円分多くお金を回収できていますし、手元には10万円が返ってきます。その10万円でBさんにお金を貸してあげれば、Bさんの利子の1万円もゲットできます。
これが「ローンを証券化した商品」を売るしくみとメリットとなります。
回収権を買い取っていたリーマンブラザーズ
リーマン・ブラザーズのよう投資銀行は先ほどの例でいうCさんの立場になります。つまり返してもらう権利をローン会社から多く買い取っても、それ以上の金額を回収できて儲けが出る。
そのため、サブプライムローンをたくさんローン会社から買い取っていました。そして、その買い取ったローンを「証券」として投資家や他の銀行に売りつけていたのです。これが「モーゲージ証券」と呼ばれるものです。
そしてローン会社も投資銀行がローンを買い取ってくれるので、たくさん貸し出しを行って儲けを出したいと考えました。すると、ローンの審査基準はどんどんガバガバになっていきます。
絶対返しきることができないだろうとわかっているような人にも「マイホームがローンで買えますよ」と呼び掛けていったのです。
しかし、この理想的な状況は「きちんと返済してもらえること」が前提になっていることにお気づきでしょうか?
貸した相手が返してくれなかった…
前回の記事で、サブプライムローンは「所得が低かったり、アメリカ居住歴が短い移民であったりなど、信用が低い人」をターゲットとした、と説明しました。
つまり、サブプライムローンで貸している相手を先ほどの例でいえば「信用できる同僚のAさん」ではなく、「あなたのアパートに最近引っ越してきたばかりの、月収5万円しかないフリーター」に貸しているようなものです。
普通でしたら、最近知り合ったばかりの人にあなたはお金を貸さないと思います。しかし、Cさんが代わりに回収する権利を買い取ってくれる、と考えているので信用もない見知らぬ人にいくらでも貸し出すわけです。
しかし、これでお金を貸してあげた人が突然引っ越して、借金を踏み倒してしまったらどうなるのでしょうか?
あなたはCさん(投資銀行)にローンを売って資金を回収しているので損はありません。しかし、回収する権利を買い取ったCさんや、さらにCさんから回収権を買った人は、お金を回収することができず、先に払ってしまった分だけ損をしてしまいます。
これがリーマン・ブラザーズの経営破たんが、ひいてはリーマンショックが発生した本質的な原因です。
アメリカの金融の中心であるウォール街をはじめ、世界中にいる金融のプロたちが何故そんな簡単なことに気づけなかったのか、ということがナゾになってきます。
実は今回の事件ではローンの証券化されている危険性がわからないようにある細工されていたのです。ほとんどの人が気づかなかったカラクリについて、お話しします。
4.ウソの格付けに騙された人たち
高級な食材と安い食材をどちらがどちらかわからないままセレブに食べ比べをさせて、ドヤ顔で間違えるところをテレビ番組で見たことはないでしょうか?
今回のリーマンショックは、黒毛和牛と賞味期限切れの牛肉をごっちゃにしたものを「A5ランクの最高級です」といって食通に食べさせたら美味しいと騙せちゃって、その結果毎日食べ続けてお腹を壊した、それに近いお話です。
全ての金融商品は格付けされている
ローン会社が組んだサブプライムローンを、リーマン・ブラザーズをはじめとした投資銀行が買い取り、それを証券として他の投資家に販売していったのがリーマンショックの要因であるというお話をしました。
この買い取ったローンをはじめとして全ての証券は、信用度に応じてそれぞれAAAからBまで格付けされていました。
つまり、信用があってきちんと返せる見込みの人から借りているローンには「AAA」という高い格付けが、一方で低所得の人で全然返せる見込みもない人から無理やり借りたローンには「B」という低いランクがつけられています。
そして、ローンというのは信用が高い人には低い金利で貸し出し、信用が低い人にはリスクをカバーするために高い金利で貸し出します。
そのため、AAAのローンは踏み倒される可能性は低いがリターンも低い。一方でBのローンは、利益は高いけれど踏み倒される可能性があるということです。
通常でしたら、AAAやAAといった安定したローンを商品にしたものを買えば、踏み倒しは起こりません。逆にBBやBといった物には手を出さない方がいい、というのが市場の見解でした。
しかし、その判別ができないように、細工がされていたのです。それが「CDO」というものです。
CDOというごっちゃ煮のビーフカレー
「CDO」は「債務担保証券」のことであり、色んなローンなどの債権を組み合わせて商品にしたものです。
イメージしにくいので、投資銀行をあなたに例えてみましょう。あなたは一流シェフで色んな食材を美味しく調理していく立場です。
先ほど言った、AAAのローンは例えるなら、国産黒毛和牛のA5ランクです。値段は高いけど、その分だけ安定した美味しさがあります。一方、Bのローンはアメリカから輸入された安い牛肉で、しかも消費期限がなんと2日も過ぎています。
このままではA5ランクの和牛は売れるけど、消費期限切れのお肉は売れません。しかし、この安い牛肉も売ってしまいたい。そう考えたあなたは「ビーフカレー」にすることを考えます。A5ランクの和牛もアメリカ産の期限切れ牛肉も全て煮込んでしまうのです。
そうすれば、どのお肉が美味しいのか、美味しくないのかはわからなくなります。この「ビーフカレー」が「CDO」です。このビーフカレーをお店でお客さん、つまり投資家の人たちに振舞っていきました。
しかし、このように調理しても、ビーフカレーの中のお肉を1つ1つ取り出してみれば、あるお肉が安物であることがばれてしまいます。
そうならなかったのには、格付け会社の影響がありました。
評価サイトで何にでも5点満点つける人
このようなCDOは危険である、ということに気づかせないように仕向けた人がいました。それが格付け会社の格付けです
。アメリカには、国の借金である国債から民間企業にまで、様々なものに信用度を格付けている会社があります。先ほどの例でいえば、有名な料理評論家のような人です。
この有名な料理評論家が、あなたのごっちゃ煮ビーフカレーを食べました。すると、「これはとても美味しい!三つ星だ!」という評価を出し、雑誌やブログにその内容を載せたのです。
つまり、サブプライムローンの商品に格付け会社は「AAA」や「AA」という高い評価を与えたということです。
もちろん、この格付けはずさんなものでした。他の格付け会社に仕事を取られたくないという考えから、いい評価しかつけなかったのです。
有名な人が美味しいと言うのだから、世の中の人はあなたのビーフカレーを求めてレストランには行列ができます。
しかし、A5ランクの和牛なんてそうそう仕入れられません。そのうち、安い牛肉の比率がどんどん高くなっていきます。お肉の消費期限もどんどん過ぎたものが入っていきます。
それなのに、料理評論家は三ツ星(AAA)を出したままなので、どんどん売れていきます。
そして崩壊していったウソ
こうして本来は危険なサブプライムローンが入っているということも理解されないまま、投資家たちはCDOを買っていきました。
しかし、入っている牛肉のほとんどが腐りかけであるビーフカレーを食べ続けていいはずがありません。こうして、ある日食中毒事件で多くのお客さんが体調不良になり、レストランは閉店に追い込まれました。
これが、投資家が倒れ、リーマン・ブラザーズが倒産したリーマンショックとなります。
こうして発生したリーマンショックですが、これらの商品をあまり扱っていなかった日本にも大きな影響を与えました。
リーマンショックによって、多くの会社が倒産を余儀なくされ、多くのサラリーマンが職を失うこととなったのです。
何の備えもしていなかった人たちは、会社に言われるがままにリストラに遭い、新しい職を見つけることもできず、生活を送ることすら危機的な状況であったことでしょう。
しかし、なぜアメリカで発生したリーマンショックの影響が日本にまで飛び火したのでしょうか?
そして、再び経済危機が発生したとき、あなたが生き残るにはどうすればよいのか、一緒に考えていきましょう。
5.対岸の火事から飛び火した日本
日本はリーマンショックの原因となった「サブプライムローン」にあまり関わっていなかったため、直接的なダメージはそれほど大きくないだろうという見通しがありました。
というのも、日本人は1990年代に日本国内の不動産や株のバブルとその崩壊を体験しています。この教訓から、アメリカの加熱しすぎている不動産バブルには慎重な見方の人が多かったのです。
そのため、はじめは対岸の火事のようにあまり影響しないだろうと考えられていましたが、経済危機が深刻になるにつれて、結局は日本もその渦に巻き込まれてしまいました。
具体的に数字で見てみると、日本の株価や景気の指標ともいえる日経平均株価がリーマンショックによって約13500円から約7000円まで下げています。
つまり、日本の大企業の株価がほとんど半分になってしまった、もっと簡単な言い方をすれば、日本のほとんどの会社の価値が半分になってしまったということになります。
冷静に考えて大変恐ろしい事態、これが「リーマンショック」の日本における影響だったのです。
では、なぜサブプライムローンに直接関わっていない日本の景気まで悪くなってしまったのでしょうか?
何か起こると円は買われる
日本の景気が悪くなった主な原因の一つはこの一連の経済危機を受けた円高です。
世界には日本円の他にドルやユーロといった様々な通貨がありますが、日本の円はその中でも「安全資産」と呼ばれています。そして、安全資産はこのような大規模な経済危機や戦争、テロなどの非常事態の場合に買われる傾向があるのです。
例えるなら、ユーロやドルは家の外で、円はあなたの自宅です。普段は外に出て活動しますが、突然の大雨が起きたらとりあえず安全な自宅に帰ると思います。
これと同じように、リーマンショックでも、持っている資産をとりあえず比較的安全な日本円に両替しておこうという人が多かった。
それによって、円が買われていき、どんどん円の価値が上がる、つまり「円高」へと変化したのです。1ドル110円だった円はリーマンショック後に1ドル80円台まで下がっております。
急激な円高で日本は重い病を患う
日本の貿易を全体で見てみると、自動車や鉄鋼などを輸出して収益を上げています。そのため、円高の状況は輸出企業には圧倒的に不利なのです。
わかりやすくするために自動車の例で考えてみましょう。アメリカで、1台1万ドルの価格で売られていた日本車は、リーマンショック前は日本円にすると110万円で売られていたることになります。
しかし、この状況が1ドルが80円になると、1台当たりの値段は80万円まで下がってしまい、結果的に同じものを作っているのに30万円分利益が減っています。
そして、このような利益が出にくい状況が発生すると、輸出で成り立つ製造業の業績は悪くなります。
すると、これらの製造業を営む会社の経営者は「原材料や人件費などが円高で高くなってしまう日本で作って輸出するのではなく、実際に売る場所やコストがかからない地域で作ろう」という考えになります。
このように製造業が海外生産の方針に転換すると、大企業の工場がそろって海外に移転するという「産業の空洞化」が発生し、その大企業の下請けなどの形で生計を立てていた中小の企業は仕事がなくなり、結果として倒産してしまいます。
さらに、この影響は製造業だけにとどまらず、日本全体の経済に飛び火していきました。
6.リストラされても生きるために
びっくりするかもしれませんが、日本人は実はリスキーな生き物です。
会社という、いつ切り捨てられるかわからないものだけに頼って生活しようとし、自立するために何をすべきかを全く考えません。
そして、リストラされると口を揃えて「国のせいだ」と政治に責任を転嫁します。金銭的自由を得たいのであれば、まず自分で考えることが必要だと気付いていないのです。
それでは、リストラされても自立して生きていける人とそうでない人、この違いはどこにあるのでしょうか?
倒産→不良債権→銀行がお金を貸さない→また倒産
まずはあなたが身を置く会社、そして社会の基本的なお金の動きというのを整理してみましょう。
多くの会社は事業を行うために銀行からお金を借りています。景気のいい時は会社が成長するため、利益の中から借りたお金とその利子を返すことができるので、銀行も積極的に貸しているのです。
しかし、今回のように一気に景気が悪くなり、倒産する会社が増えたとしましょう。倒産してしまった会社は銀行にお金を返すことができません。
銀行はお金を回収できなくなってしまった、つまり「不良債権」を抱えてしまうこととなります。そして貸したお金が返ってこないということは、銀行の収益も悪化してしまいます。
銀行はこれ以上収益が悪くならないように、新しくお金を貸すことをやめ、貸しているお金を無理やり回収しようとします。
これによって、経済にお金が回らなくなるため、より景気が悪くなる。そしてまた、会社が倒産する。このような悪循環に突入していくのです。
日本はどうすればいいのか?
経済危機は必ず再びやってきます。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という言葉にあるように、人間はバブルを構築して、それが崩れるというのを何度も繰り返しているのです。
しかし、世界的な経済危機に日本が完全に巻き込まれないようにすることは、グローバル化が進行した社会では江戸時代に戻って鎖国でもしない限り、不可能と言えます。しかし、被害を軽減するということは可能ではないかと考えられます。
例えば、日本に与えた影響の連鎖の発端となった点に着目すると、輸出産業に大きく依存している状況が問題であるといえます。
確かに日本のモノづくりの技術は今まで他の国々より優位を保ってきたと言えますが、他の新興国の発展なども考えるとこの構造は持続させ続けることは厳しいでしょう。
既に日本に存在する高い技術や人材の力を活かし、世界の国々からお金を集められる情報・金融といった、製造業よりもより高次な産業を特に伸ばしていくことが重要ではないでしょうか。
経済が危機的でもあなたが負けないために
そして忘れたころにやってくるかもしれない経済危機に対して、あなたが個人ができること、それは会社からの給与だけに依存しない資産形成を行うことです。
会社だけの給与だけで生きている状態というのは、言い換えれば命綱をたった1本で岩場を上っているようなものです。
そして、不況が来れば会社は容赦なくその綱を切ってきます。いくら信用できる会社でも、尊敬できる上司がいようとも、会社からすれば所詮あなたは他人なのです。
再び不景気が来て、会社からの給与という命綱が切られたとき、あなたはそのまま転落していくのか、それとも資産を運用していることによる他の収入という命綱で生き永らえるか。
今の段階からあなたがお金について「学ぶ」という準備をしているかどうかで運命は決まってしまうのです。