サブプライムローンの「CDO」とずさんな「格付け」とは

リーマンショックでは世界中の人がバカだった

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高級な食材と安い食材をどちらがどちらかわからないままセレブに食べ比べをさせて、ドヤ顔で間違えるところを放送している番組があります。

今回のテーマは、黒毛和牛と賞味期限切れの牛肉をごっちゃにしたものを「A5ランクの最高級です」といって食通に食べさせたら美味しいと騙せちゃって、その結果毎日食べ続けてお腹を壊した。それに近いお話です。

【前回の記事】では、なぜ「サブプライムローン」という危険な物がどんどん広がっていってしまったのか、ということを貸し出しシステムに注目して説明していきました。

今回はその続きとして、なぜそのような危ないものに世界中の投資家が手を出して、大やけどをしたのか、ということをお話ししていきます。

このシリーズではリーマンショックをわかりやすく解説しております。【第1回目】をお読みでないかたは、こちらからご覧ください。
リーマンショックは何が起こったのか④

全ては格付けされている

前回の記事では、ローン会社が組んだサブプライムローンをリーマン・ブラザーズをはじめとした投資銀行が買い取り、それを証券として他の投資家に販売していったのがリーマンショックの要因であるというお話をしました。

この買い取ったローンをはじめとして全ての証券は、信用度に応じてそれぞれAAAからBまで格付けされていました。

つまり、信用があってきちんと返せる見込みの人から借りているローンには「AAA」という高い格付けが、一方で低所得の人で全然返せる見込みもない人から無理やり借りたローンには「B」という低いランクがつけられています。

そして、ローンというのは信用が高い人には低い金利で貸し出し、信用が低い人にはリスクをカバーするために高い金利で貸し出します。

そのため、AAAのローンは踏み倒される可能性は低いがリターンも低い。一方でBのローンは、利益は高いけれど踏み倒される可能性があるということです。

通常でしたら、AAAやAAといった安定したローンを商品にしたものを買えば、踏み倒しは起こりません。逆にBBやBといった物には手を出さない方がいい、というのが市場の見解でした。

しかし、その判別ができないように、細工がされていたのです。それが「CDO」というものです。

CDOはごっちゃ煮のビーフカレー

「CDO」は「債務担保証券」のことであり、色んなローンなどの債権を組み合わせて商品にしたものです。イメージしにくいので、投資銀行をあなたに例えてみましょう。あなたは一流シェフで色んな食材を美味しく調理していく立場です。

先ほど言った、AAAのローンは例えるなら、国産黒毛和牛のA5ランクです。値段は高いけど、その分だけ安定した美味しさがあります。一方、Bのローンはアメリカから輸入された安い牛肉で、しかも消費期限がなんと2日も過ぎています。

このままではA5ランクの和牛は売れるけど、消費期限切れのお肉は売れません。しかし、この安い牛肉も売ってしまいたい。そう考えたあなたは「ビーフカレー」にすることを考えます。A5ランクの和牛もアメリカ産の期限切れ牛肉も全て煮込んでしまうのです。

そうすれば、どのお肉が美味しいのか、美味しくないのかはわからなくなります。この「ビーフカレー」が「CDO」です。このビーフカレーをお店でお客さん、つまり投資家の人たちに振舞っていきました。

しかし、このように調理しても、ビーフカレーの中のお肉を1つ1つ取り出してみれば、あるお肉が安物であることがばれてしまいます。そうならなかったのには、格付け会社の影響がありました。

評価サイトで何にでも5点満点つける人

このようなCDOは危険である、ということに気づかせないように仕向けた人がいました。それが格付け会社の格付けです。アメリカには、国の借金である国債から民間企業にまで、様々なものに信用度を格付けている会社があります。先ほどの例でいえば、有名な料理評論家のような人です。

この有名な料理評論家が、あなたのごっちゃ煮ビーフカレーを食べました。すると、「これはとても美味しい!三つ星だ!」という評価を出し、雑誌やブログにその内容を載せたのです。

つまり、サブプライムローンの商品に格付け会社は「AAA」や「AA」という高い評価を与えたということです。

もちろん、この格付けはずさんなものでした。他の格付け会社に仕事を取られたくないという考えから、いい評価しかつけなかったのです。

有名な人が美味しいと言うのだから、世の中の人はあなたのビーフカレーを求めてレストランには行列ができます。しかし、A5ランクの和牛なんてそうそう仕入れられません。そのうち、安い牛肉の比率がどんどん高くなっていきます。お肉の消費期限もどんどん過ぎたものが入っていきます。

それなのに、料理評論家は三ツ星(AAA)を出したままなので、どんどん売れていきます。

嘘はいつか崩壊する

こうして本来は危険なサブプライムローンが入っているということも理解されないまま、投資家たちはCDOを買っていきました。

しかし、入っている牛肉のほとんどが腐りかけであるビーフカレーを食べ続けていいはずがありません。こうして、ある日食中毒事件で多くのお客さんが体調不良になり、レストランは閉店に追い込まれました。

これが、投資家が倒れ、リーマン・ブラザーズが倒産したリーマンショックとなります。

こうして発生したリーマンショックですが、これらの商品をあまり扱っていなかった日本にも大きな影響を与えました。

【次の記事】では、日本になぜ影響を与えたのか、そして日本やあなたはこれからの時代でまた起こりうる経済危機にどのように生き残っていくべきか、について考えていきましょう。(⑤に続く)

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サブプライムローンの「CDO」とずさんな「格付け」とは
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