「言いたいことはわかるんだけど、読みづらい……」
自分の書いた文章を見直してみると、ちゃんと考えているのにそれが文章でうまく伝えられていない。あなたもそんな体験はありませんか?
出来ることならば、一回読んでもらうだけですぐにこちらの言いたいことが伝わる文を書きたいものですよね。逆に言えば、読みにくいメッセージは相手に面倒さしか与えませんし、文書が下手な人は「頭が悪い」という印象を持たれてしまうかもしれません。
今回は、わかりやすい文を書くための簡単なコツを1つお教えいたします。明日から、いえ、今日から簡単に実践できるものとなっておりますので、是非コツをつかんで自分の考えをうまく上司や友人に表現できるようになりましょう!
文をわかりにくくする犯人は「修飾」
そもそも、単語の使い方や文自体が間違っていないにも関わらず、何故あなたの文はわかりにくいと言われてしまうのでしょうか?文がわかりにくいように思われてしまう一番の理由は「『修飾の順序』をうまく理解できていない」ことにあります。
日本語に限らず、どの言語でも文章の基本の形は単純です。あなたが中高生の時の英語の学習を思い出していただきたいのですが、勉強のつまづきポイントとして「この修飾語がどこを修飾しているのかわからない」ということはありませんでしたか?
これは英語の語順のルールをうまくつかめていないからであり、日本語にも同様に「わかりやすい語順」のルールというのは存在するのです。
具体的な例で考えてみましょう。あなたは「コピー用紙」を以下のようにより詳しく説明したいと考えました。
A.「厚めの」コピー用紙
B.「横線が入った」コピー用紙
C.「白い」コピー用紙
これら3つの修飾を加えたいと思ったときに重要なのが「順序」です。なぜ順序が重要なのか、次の2つ文章を比較していただければ理解していただけれると思います。
① 横線が入った厚めの白い コピー用紙
② 厚めの白い横線が入った コピー用紙
どうでしょうか?1番と2番では完全に違うコピー用紙を想像することとなるのではないでしょうか?
2番では「厚めの白い」が「横線」に修飾されてしまい、コピー用紙にはかかっていないことになります。順序を変えてしまうことが大きな違いを生んでしまうことを実感していただけたのではないでしょうか。
では、どういう点に気を付ければこのような過ちが起こらないのか。それは、とても単純な1つの原則に従うだけで解決するのです。
「長い語」は前!「短い語」は後!
さっきのA~Cの修飾語の中で、Bだけ「横線の入った」というように、他のAやCの修飾より長くなっていることにお気づきでしょうか。つまり、わかりやすい文章の大原則は「長い修飾語を文の前の方に置いてあげること」なのです。
他の例でも見てみましょう。近年自転車の無灯火運転が問題となっていますが、それを表す①~③の文の中で、どれがもっとも自然に伝わってくるでしょうか。
① ライトを消して止まらずに速く 走る自転車
② 止まらずに速くライトを消して 走る自転車
③ 速くライトを消して止まらずに 走る自転車
「ライトを消して」「止まらずに」「速く」。この長い順に並べた①の文章がもっとも自然であり、その他は「止まらずにライトを消す」や「速く(早く)ライトを消す」といったように違う意味にとられてしまうことがおわかりでしょうか?
つまり、あなたが文を書いていて、色々ごちゃごちゃして文章がわかりづらくなった、と感じたら一度それぞれの単語の順番を見直してみると、わかりやすい文章へと生まれ変わります。
一方、「主語は述語の前に置くのが正解だ」という主張がありますが、これは必ずしも正しいと言えないことも説明できます。
主語の位置も結局は「長さ」で決まる
主語をどこにおいたらわかりやすい文となるか、その疑問も全て「語の長さによる順序」に従えばよいというのがわかります。次の例を見てみましょう。
電車が遅れると私は 思った。
この文章では、「電車が遅れると」「私は」「思った」と分けられます。「電車が遅れると」より主語である「私は」の方が短いですので、「思った」の直前にあるのが読みやすいと言えるでしょう。しかし次の例ではどうでしょうか?
① 電車が遅れると長年この鉄道の沿線に住み毎朝利用している私は 思った。
② 長年この鉄道の沿線に住み毎朝利用している私は電車が遅れると 思った。
「長年この鉄道の沿線に住み毎朝利用している私は」というように主語が長くなると、「電車が遅れると」というより短い節より後に置かれると文の読みにくさが出ます。
やはり基本的に長い1つのかたまりは文の先に置くことが重要なのです。
いかがだったでしょうか?ビジネスでも、日常的なメールやSNSでも、伝わりやすい文を書くとあなたの言いたいメッセージが相手により伝わります。ぜひ「長い語は先、短い語は後」という原則を今日から実践してみましょう!
(参考文献)「〈新版〉日本語の作文技術」:本多勝一(朝日新聞出版)