「人にしたことは全部自分に返ってくる」
このセリフをあなたも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?親や先生から言われてきたもあまりピンと来てなかった人は多かったと思います。
しかし他人にした良いことは自分に返ってくる、というのはあながち間違いではないということが実験によって説明されています。
今回の記事では良い行いは返したくなる、という人間の性質である「返報性の原理」について、わかりやすく解説したいと思います。
飲み物を奢ってあげる実験
自分に返ってくるという「返報性」は実際にあったということを証明した実験の紹介から入りましょう。
この実験は2人1組のペアが参加しました。そのうち1人は実験の概要を伝えてある仕掛け人で、実質もう1人の被験者を見る実験といえます。
この2人組にはパターン1かパターン2のどちらかを行ってもらいます。
パターン1:実験の休憩中に、仕掛け人が2本コーラを買ってきて、そのうち1本をもう1人に「君の分も買ってきたよ」とプレゼントする。
パターン2:実験の休憩中に仕掛け人はこれといった親切をしない。
いずれのパターンでも実験終了後に仕掛け人が被験者に次のようなお願いをします。
「私は新車が当たる1口30円程度のくじを個人的に売っているのだけど、何枚か買ってくれませんか?できるだけたくさん買ってくれたら嬉しいです」
つまり先に親切な行為を受けた被験者が「くじを買ってあげる」という行動でお返しをするという形です。その結果が意外なものになったのです。
優しくすると、2倍も買ってくれた
実験の結果、飲み物をもらったパターン1の被験者は、何も親切をされなかったパターン2の被験者に比べておよそ2倍の枚数のくじを買ってくれたそうです。
さらにこの実験では被験者に「仕掛け人のことをどう思っていますか?」という好感度を聞くアンケートを実施していました。
するとアンケートで得られた好感度とくじを買った枚数には相関性がなかったことがわかりました。
つまり「人の好き嫌いに関わらず、何かされたらお返しをしたくなる」という事実がこの実験で証明されたのです。しかし何故このような結果になったのでしょうか?
「お返し」をしたい気持ちは必ず湧く
もしあなたが同僚から誕生日にプレゼントをもらったとしましょう。あまり親しくしていない人からでも、もらったらお返しという形でその人の誕生日には何か贈ろうと考えてしまうのではないでしょうか?
受け取った好意を返さないと礼儀知らずだと思われる、この意識は皆の心の奥底にあるものです。そこから受けた恩は返したいという考えが浮かびます。これが「返報性の原理」です。
これをビジネスで利用しているのが「無料○○」というものです。
例えば通信販売の「気に入らなかったら返金します」や英会話教室やジムの「1週間無料体験」は、「無料でしてもらったから、買ったり、入会したりしないと申し訳ないな」という「返報性」を利用したものと言えます。
そして返報性は物のプレゼントだけで発生する訳ではありません。
それは相手に役立つだろうなと思われる「情報」であったり、こんな人とは気が合いそうだな、という「人」の紹介であったりなど、お金で買えない可能性もあります。
重要なポイントは相手が喜ぶことを適切なタイミングでしてあげる奉仕の精神なのです。
たくさん渡して、たくさんもらう
仕事でも日々の人付き合いでも、「自分から先に何かをしてあげる」という誠意を見せることが良い人間関係を築く上のテクニックになります。
しかしこれはお金をバラマキのように使っていく、ということではありません。
相手が欲しいだろう、必要としているであろうものを、あなたが可能な範囲で叶えてあげたら相手は大変嬉しく思うのではないでしょうか?
そしてそのお返しとしてあなたが受け取るものは、お金では換算できないほどの価値のあるものかもしれません。
あなたが贈り物をした人に紹介された知り合いが、将来あなたが大成功するビジネスのパートナーかもしれません。もしくは紹介された人と気が合えば結婚まで、そんな例も世間には少なくないと思います。
一般的に成功している人のほとんどが重要視しているものが「人とのつながり」です。一見自分にと関係がなさそうな人でも、意外なところにビジネスチャンスが眠っていることを知っているからです。
そのつながりの基本にあるのも、やはり「返報性」です。まずは身近な人から、軽い気持ちで「贈る」ことを始めてみたら、それがあなたの将来な莫大な財産として返ってくるかもしれません。
そして返ってくるものは遠慮なく受け取りましょう。この「give&take」があなたの社会人としての成功を推し進めてくれるのです。
(参考文献)池田貴将『図解 モチベーション大百科』