「もうお金を払っちゃったのだから、最後までいよう」
「せっかく時間かけてきたのだから、最後までやろう」
普段の生活からこういった考え方をしていませんか?一見お金や努力を大切にしているように見えるこの考え方は、あなたがもっと楽しい日々を送るチャンスを潰している可能性があるのです。
今回は「サンクコスト」について解説します。あなたがビジネスマンとして成功するために、そして私生活を充実して過ごすためには知っておかなければいけない物事の捉え方です。
既に支払ったお金をどう考える?
既にあなたが支払った費用のことを、サンクコスト(埋没費用)といいます。サンクは英語で「沈む」を表す単語ですから、沈んでいった費用、つまり二度とあなたに返ってこない費用のことを指します。
定義を説明するだけではイメージが湧きにくいと思いますので、あなたが映画館に見に行くケースを例にしてみましょう。
あなたは職場の同僚にとある上映中の映画をおススメされたとしましょう。そして次の休日に時間もあったあなたは、気分転換がてらその映画を見ようと思いつきました。調べると2時間半の少し長めの映画のようです。
料金は1500円。チケットを買っていざ映画を見始めますが、少し経つとこの映画が出だしから全く面白くなさそうであるとわかります。冒頭15分見たら、登場人物は多い上に設定は良くわからない。つまらないのか周囲では寝始める人もいました。
さて、ここであなたは2つの選択肢があります。
「A.1500円払ってしまったからと、残り2時間15分見続ける。」
「B.払ったお金のことは忘れて、映画館を出る。」
ここで、あなたの人生の今までの選択を見返してみたら、Aを選んできていませんか?しかし、それはある呪いにかかっている故の誤りなのです。
サンクコストの呪いから脱せ!
先ほどの映画館の例で考えると、支払ってしまった1500円というのは取り返すことのできない費用、つまりサンクコストです。この返ってこないお金にこだわり続けてしまうことを「サンクコストの呪い」と言います。
つまり、Aを選択したあなたは、サンクコストである1500円を惜しむあまり、この先見てもつまらないと分かっている映画を見続けることで、残りの2時間15分という貴重な時間も失っているのです。
成功する人はサンクコストが返ってこないことをきちんと理解した上で、「つまらない映画だったけど、勉強代として残りの時間を有効活用しよう」と切り替えを行います。
どんな人でも、最初から正解がわかるわけではありません。映画でいえば見る前から面白いかどうかはわかりません。仕事でいえばその事業が成功するかどうか予測はできても結果なんてわかりません。
しかし、成功する人というのは「失敗しない」人ではなく、「失敗とわかった後に切り替えができる」人なのです。
しかし、悲観することはありません。これと同様の過ちを国レベルでやってしまったこともあったのです。それが超音速飛行機「コンコルド」です。
夢の乗り物「コンコルド」
1970年代にイギリスとフランスで開発された民間の飛行機の1つが「コンコルド」です。この飛行機は何がすごいかというと「マッハ2」、すなわち音速の2倍の速度で飛べるのです。
私たちが普段乗ってる飛行機の最高速度は大体時速1000km弱であり、音速を超えることはありません。日本国内の移動であれば2時間ほどあれば大体移動できますが、遠い外国へ行く場合は時速1000kmで飛んでも数時間かかってしまいます。
この時間を短縮しようと計画されたのが「コンコルド」です。ロンドン~NYの移動が普通の飛行機では7時間であるのが、コンコルドなら3時間半で移動できることになりました。
当時で言えば夢のような乗り物であるコンコルドはそうして開発がスタートしましたが、途中である問題に気づきます。それは開発コストの回収がほぼ不可能という問題です。
飛ぶだけで大金が吹き飛ぶ飛行機
超音速で飛ぶため、今までの飛行機とは何もかも違っていました。そもそも機体が特殊すぎて離発着できる空港が少ない。速度を優先した結果、座席数が激減して収益性が最悪。音速を超えるときにすさまじい音が発生し、周辺に騒音問題が発生などなど。
こうして航空会社の経営の面でも、環境の面でもコンコルドは全く売れず、2003年に全機が引退するまでたった20機しか実際に運航できませんでした。当然作った会社は数兆円という赤字を抱えて倒産しました。
これら問題が発生することは1970年代に発覚していました。その時はまだ4000億円程度の開発費でしたが、この投入してしまったお金を何とか回収したいという思いが強かったのでしょう。4000億円という「サンクコスト」に囚われ、結局数兆円を失う結果となったのです。
人間の行動にはどうしてもあきらめの悪さが伴ってしまいます。今まで投下したお金や努力を考えると簡単に切り捨てることができないでしょう。
しかし、これ以上のお金や時間の浪費は意味がないとちゃんと考えて止める、「損切り」するという考えが重要です。これが出来ない究極例が数兆円を失ったコンコルド計画なのです。
あなたも毎日の貴重な時間を大切に使うために、沈んでいったものを無理に拾おうとせず次に切り替えること、これの大切さをコンコルドは教えてくれたのです。