「10億円の豪邸に住みたくないですか?」
「え、お金がない?大丈夫!ローンで今すぐ住めますよ!」
「そんなローンでは返せない?大丈夫!最初は月々5万円だけ返していけばいいですよ!」
もし、こんなローンを勧められたらどうでしょうか?絶対返せるわけがないとお分かりだと思います。しかし、これに似た状況が2000年代のアメリカでは平気で行われていたのです。そして、このシステムの崩壊があのリーマンショックを引き起こした原因なのです。
【前回の記事】でリーマンショックがどういうものかということを理解していただけたと思います。そこで今回はそのリーマンショックのきっかけともいえる「サブプライムローン」について、詳しく学んでいきましょう。
借金は信用の元に成り立つ
サブプライムローンについて考える前に、まずローンの基本について確認しましょう。
日本でも銀行からお金を借りるときは基本的に「信用」というものが必要になります。例えば、勤めている会社が上場しているか、勤続年数がどのくらいか、その他今までの納税額や借金・クレジットの支払い状況など。
借りた人が借りたお金を最後まできちんと返せるかどうかというのを「信用度」で測っています。そして、その審査で貸し出しの是非や貸してくれる上限金額というのが決まるのです。
アメリカも同様で、信用がきちんと証明できる条件をクリアすれば、金利が低く設定される「プライムローン」というものを利用できます。
一方、アメリカの住宅市場に目を向けてみると、住宅の価格というのが年々上昇していました。そして、家の値段が上がりすぎて、低所得者が買うことができない状況になっていたのです。通常ですと、低所得者の人は返済する能力がないと考えられ、普通のローンで買うことはできません。
しかし、「このまま住宅価格が上昇していくのであれば、無理やりローンを組んだとしても住宅の価値の上昇分で利益が出る」とお金を貸して儲けたい銀行は考えたのでしょう。
そうして、所得が低くなっている、あるいはアメリカに居住歴がほとんどない移民など、信用が十分でない人でも組めるローンというものを作ったのです。これが「サブプライムローン」です。
しかし、低所得者が高い家を借りても、普通のローンでは返済できません。そこで、あるカラクリを潜ませたのです。
最初は少ない返済で大丈夫という罠
ここでは例として、毎月20万円を返す住宅ローンを考えましょう。しかし、月収20万円の人にその金額を毎月返済してもらうことは不可能です。
そこで貸し出す銀行はサブプライムローンに特殊なルールをつけます。そのルールが「ローンを組んだ初めの期間は返す金額を少なくてよい」というものです。
本来であれば毎月20万円返さなければいけないところを、はじめは毎月10万円だけ返済すればよい、ということになります。そして、ここで足りない10万円分は貸している金額にさらに足されます。
しかし、少ない金額だけ返済すればいい一定期間を過ぎると、返済額は一気に上がり、もともと所得が低い人たちが支払うことは不可能になります。その場合は新たにローンの借り換えを行う必要があるわけですが、これは住宅の価値が上がっていないとできません。
つまり、サブプライムローンは最初から崩壊することがわかっていたローンということになります。そうしてアメリカの返済システムでは崩壊していったのです。
家を手放せば返済しなくていい!
日本でローンを組むと、買った家を手放した場合でも原則としてローンの返済義務は残ります。しかし、アメリカのローンの場合、家を手放してしまえばローンの返済義務も同時になくなるのです。
すると、ローンが払えなくなった人の家を銀行が抵当で差し押さえます。そして銀行は貸したローンの残り分を回収するために家を売ろうとします。
さて、この現象がアメリカのあちこちで起きるとどうでしょうか?市場に家が大量に余っている状態、つまり、住宅の価格がどんどん下がっていくのは明らかです。
ここでサブプライムローンの前提を考えてみると、住宅の価値が上がると見込んで組んでいるローンなので、返済できない人がどんどん増えていきます。
すると、銀行は支払いが滞っている人から家を取り上げて、それを叩き売る。そして、売り出しの住宅の量がまた増えるので価格が下がる。ついに上昇し続けた住宅市場に限界が来るのです。
サブプライムローンのシステムは崩壊
こうして返せるはずもない住宅ローンを組んだ人は家を失い、この結果アメリカでは家を失った人が大量に発生してしまったというのが、サブプライムローン問題の一つの側面です。
しかし、あくまでこの住宅市場の崩壊というのはサブプライムローンによって生じた問題であり、「リーマンショック」はこのサブプライムローンを利用して利益を生もうとした投資銀行が破綻した問題となります。
そこで【次の記事】ではサブプライムローンの裏側で何が行われていたのかを見ていきましょう。(③へ続く)