リーマンショックやサブプライムローン問題で何が起こったのか、きちんと説明できる人はほとんどいません。
だからこそ、きちんと知っておくことでこれからの世界経済が危険な状態なのか判別できますし、万が一の経済危機が再び起きても、あなたはそれに備えて資産を守ることもできるでしょう。
サブプライムローンの裏側で何が起こっていたのか、完璧に理解しておきましょう。
ローンを商品にして転売する!?
住宅ローン会社はローンの利息が欲しいので、色んな人にお金を貸し出していきます。しかし、このまま貸し出しだけを続けていくと、ローン会社の金庫はすっからかんになってしまい、新しく貸し出すことができません。
それを解決したのが「住宅ローンの証券化」というものです。証券化とは「貸している借金に利子をつけて返してもらう権利」を商品にしたものです。わかりにくいと思いますので、ローン会社をあなたに例えて考えてみましょう。
返してもらう権利をそのまま売る
あなたは会社の同僚のAさんに頼まれて10万円貸しているとしましょう。Aさんは返す時にお礼として1万円分の焼肉を奢ってくれるという約束をしています。
しかし、ここであなたは別の友人であるBさんにも「返す時に1万円プラスするから、今すぐ10万円を貸してほしい」と言われました。
しかし、あなたは既にAさんへお金を貸しているので、お金に余裕がありません。Aさんに今すぐ返してくれということはできませんし、Bさんを断ると1万円もらえるチャンスを失ってしまう。
ここで、「借金を証券化する」ということをします。あなたは知り合いのCさんに「Aから10万円返してもらって、かつ1万円分の焼肉を奢ってもらえる権利を10万5千円で買わないか?」とお願いします。
Cさんからすると、Aさんにお金を返してもらえば、1万円の焼肉を実質5000円で食べられるので、5000円分得になると考えて、あなたから買い取ってくれます。
そして、あなたも5000円分多くお金を回収できていますし、手元には10万円が返ってきます。その10万円でBさんにお金を貸してあげれば、Bさんの利子の1万円もゲットできます。
これが「ローンを証券化した商品」を売るしくみとメリットとなります。
回収権を買い取っていたのがリーマン
リーマン・ブラザーズのよう投資銀行は先ほどの例でいうCさんの立場になります。つまり返してもらう権利をローン会社から多く買い取っても、それ以上の金額を回収できて儲けが出る。
そのため、サブプライムローンをたくさんローン会社から買い取っていました。そして、その買い取ったローンを「証券」として投資家や他の銀行に売りつけていたのです。これが「モーゲージ証券」と呼ばれるものです。
そしてローン会社も投資銀行がローンを買い取ってくれるので、たくさん貸し出しを行って儲けを出したいと考えました。すると、ローンの審査基準はどんどんガバガバになっていきます。
絶対返しきることができないだろうとわかっているような人にも「マイホームがローンで買えますよ」と呼び掛けていったのです。
しかし、この理想的な状況は「きちんと返済してもらえること」が前提になっていることにお気づきでしょうか?
もし貸した相手が返してくれなかったら?
前回の記事で、サブプライムローンは「所得が低かったり、アメリカ居住歴が短い移民であったりなど、信用が低い人」をターゲットとしたと説明しました。
つまり、サブプライムローンで貸している相手を先ほどの例でいえば「信用できる同僚のAさん」ではなく、「あなたのアパートに最近引っ越してきたばかりの、月収5万円しかないフリーター」に貸しているようなものです。
普通でしたら、最近知り合ったばかりの人にあなたはお金を貸さないと思います。しかし、Cさんが代わりに回収する権利を買い取ってくれる、と考えているので信用もない見知らぬ人にいくらでも貸し出すわけです。
しかし、これでお金を貸してあげた人が突然引っ越して、借金を踏み倒してしまったらどうなるのでしょうか?
あなたはCさん(投資銀行)にローンを売って資金を回収しているので損はありません。しかし、回収する権利を買い取ったCさんや、さらにCさんから回収権を買った人は、お金を回収することができず、先に払ってしまった分だけ損をしてしまいます。
これがリーマン・ブラザーズの経営破たんが、そしてリーマンショックが発生した本質的な原因です。
そうすると、アメリカの金融の中心であるウォール街をはじめ、世界中にいる金融のプロたちが何故そんな簡単なことに気づけなかったのか、ということがナゾになってきます。
実は今回の事件ではローンの証券化されている危険性がわからないようにある細工されていたのです。ほとんどの人が気づかなかったカラクリについて、【次の記事】でお話ししていきたいと思います。(④に続く)