【前回の記事】で日本の借金が日本人によって持たれていることによって安定が図られていることをご紹介しました。
しかし、日本の国内のお金が減った場合はいきなりまずい状況になるのか、というとそうではありません。なぜなら、日本人は日本以外にも大量のお金を保有しているからです。
今回は日本の借金が多額にもかかわらず財政が破綻しない理由、その3つ目である「海外にある日本資産」という観点から考えてみたいと思います。
今回のシリーズでは「日本の借金」に注目して全7回にわたって解説していきます。
・日本はなぜこんなに借金をして潰れていないのか? (⇐ココ)
・日本は今後も本当に潰れないのか?
・日本であなたがこれから生きるために必要なこととは?
シリーズの第1回目の記事は【こちら】になりますので、まだお読みでない方はこちらからどうぞ。
日本のお金は日本だけに在らず
1つ目の理由のところでお話しした、日本の経常収支の黒字によって入ってきたお金というのは、日本の国だけで使われていません。一部は外国に存在していると言う状況になっています。
例えば日本の企業は外国で事業を行うために、外国の会社を買収したり、土地といった不動産を買ったりしています。また、日本の投資家たちは、外国の会社の株や他国の政府の債券を買っています。
その結果、日本の中に直接的にお金として存在してはいないが、日本人のものであるお金というのが多く存在しています。
一方で、外国人が日本のお金を持っている場合も存在します。例えば、外国の企業が日本に持っている土地や、外国人が日本の株を買っている場合です。このお金は本来外国の人のものですので、日本のお金とは区別して考えてあげなければいけません。
これらを考慮して、自分の国以外にどれだけのお金がおいてあるかという金額を示したものが「対外純資産」という指標になります。
理由③:対外純資産が膨大にある日本
日本人が外国にあるお金から、日本の中にある外国マネーを引いた金額を「対外純資産」と言います。言葉だけでは難しいので簡単な例でわかりやすく考えてみましょう。
あなたはアメリカの会社の株を日本で唯一持っていて、その金額は100万円分です。一方で、アメリカに住んでいるジョンも、自動車メーカーのトヨタの株を50万円分持っているとしましょう。
これ以外の土地や株の保有が存在しないとすると、この場合の対外純資産は
100万円-50万円=50万円
となります。
つまり、対外純資産がプラスで多ければ多いほど、その国は外国に多くのお金がおいてあるということになります。
そして、日本の対外純資産は2016年の末で約350兆円あるとされています。つまり日本以外に日本人が使えるお金が350兆円もあるのです。
ちなみにこの金額が実は世界トップです。ちなみに2位のドイツは約180兆円と言われ、ほぼダブルスコア並みのお金を日本人は海外に持っているのです。
つまり日本の中で急激にお金がなくなった、という状況が仮に起きたとしても、海外のお金を切り崩せばよい、この「対外純資産の膨大さ」が大量の借金にも関わらず日本の財政が破綻しない3つ目の理由です。
では本当につぶれないのか
ここまで、政府が1000兆円という莫大な借金をしているにも関わらず、財政が破綻していなかった理由を3つ説明しました。
日本という国が戦後からとても多くのお金を稼ぐ力をつけてきたということは紛れもない事実であることを理解していただいたと思います。
では、このまま政府は借金をしてきても大丈夫なのでしょうか?答えはもちろん「NO」に決まっています。
具体的に10年後に破産する、もしくは借金が2000兆円になれば破産するという数字で決めることはできません。具体的に数字がないため、政治家たちは危機感がないまま借金を繰り返していくのです。
しかし、崩壊していく道筋というのはある程度予測することができます。それでは日本の財政が破綻するときはどういう過程で至るか、ということについて【日本の破綻⑥】で考えていきたいと思います。(⑤に続く)